グルージャ盛岡 2018シーズンの振り返り
次の日曜日にはグルージャの2019シーズンがスタートします。
シーズン開幕直前ではありますが、昨シーズンを高速で振り返り「いわてグルージャ盛岡」の現在地を確認した後、2019シーズン展望に繋げたいと思います。
2018シーズンの目標
2018シーズン開幕前のサポカンや記者会見での中村取締役や菊池監督の発言をもう一度思い返して纏めると、概ね以下の通りでした。
- 2017シーズンの過去最低成績を踏まえ、2018シーズンは失敗を二度と繰り返さないよう、スタッフ一同覚悟を持って挑む。
- 「フェアプレー」「ハードワーク」「チャレンジ精神」という3つの柱は継続して行う。
- 選手には「役割と挑戦」を求め、一人一人が何をすべきか自ら考えられる選手を育てていく。
- 具体的なチーム目標は最低でもリーグ勝ち点40以上。
- 平均観客数は2,000人を目指す。
これらを踏まえた上で2018シーズンがどんなシーズンであったか、を確認します。
2018シーズン成績
ホーム :7勝3分6敗 アウェイ:5勝1分10敗
試合結果
- シーズンラストの3連勝により目標だった「勝ち点40」をピッタリと獲得し、17チーム中13位。
- 1試合平均勝ち点(1.25)は過去最高順位だった2014シーズンに次ぐ数字。しかし失点数は過去最多の56(1試合平均1.75失点)。
- ホームでの通算勝ち越しは初の快挙。しかし大量失点負けも目立った。
チームスタッツ
- 過去シーズン比ではパス数が大幅に減り(平均408本)、ロングパスの割合が増えた。スタッツは、ダイレクトにゴールを目指す志向を強めた昨季プレーの印象通り。
- ボール支配率は減少したものの(47.7%)、攻撃回数やPA侵入回数はリーグ上位。シュート数は少なくなったものの、シュート成功率は過去最高の10%台をマーク。
- これまで同様、セットプレーからの失点が多かった(13+2失点)。PKでの失点も多く(6失点)、ファールを減らしていくことも課題となった。
選手成績
- 大卒1年目だった谷口海斗選手の15得点は、J3におけるグルージャ史上最多得点の快挙。
- 宮市選手、谷口選手、藤沼選手のトライアングルは、どの対戦相手に対してもゴールの可能性を感じさせる素晴らしい化学反応を見せた。
- CB福田選手の2年連続リーグ完全出場も称賛すべき記録。警告・退場がゼロであったことも評価されるべき。
- スタッツには表れないが、5月からチームに合流し攻守にわたる大活躍を見せた小谷選手がチームに与えた影響は計り知れない。
- シーズン全体を通して怪我人が多発し、選手のコンディション管理には悩まされた。
プレーモデル・戦術
4バック(~第11節)
3バック(第12節~)
- 4バックでシーズンをスタートするも守備を安定させることが出来ず、リーグ4連敗の後、5月末から3バックに変更。以降、リーグ最終節まで3-4-2-1を継続した。
- 3バックは、攻撃時3-4-2-1、守備時5-4-1(OHがサイドへ)、状況に応じハイプレスとリトリートを使い分けるスタイル。基本的にカウンター志向のサッカー。
- 「運動量」「球際」「切り替え」は普遍のグルージャのモットー。
以下、備忘録として2018シーズンのプレーモデルの特徴を箇条書き。
<守備>
- 相手ビルドアップ時のプレスは高い位置(相手最終ライン)から開始。
- 自陣での組織的守備(5-4-1)は、相手ボールホルダーに直接圧力をかける『ゾーンの中のマンマーク』。弱点であるサイドの深い位置にはCBが対応し、空いた中央の最終ラインにはCHがカバー。
<守→攻(ポジティブトランジッション)>
- ショートトランジッション(敵陣内)ではドリブルからのクロスが多い。
- ロングトランジッション(自陣内)の第一選択肢は『裏』。スペースと走り込める自軍選手がいれば迷わずロングボールを送る。スペースや受け手が無ければサイドからのビルドアップに移行。
<攻撃>
- 基本フォメ3-4-2-1。縦への展開を急ぐ「ダイレクトなビルドアップ」を志向。CBはまずWBに預け、CH、OHとのトライアングルからのパスでサイドから崩しファイナル3rdへ侵入。
- 相手のプレス状況により、片方のCHが最終ラインに入りビルドアップすることもある。
- 相手に引かれてからのポジショナルな攻撃では手詰まりになることも多々。GKにボールを返して相手を引出してから、攻撃をやり直すこともある。
<攻→主(ネガティブトランジッション)>
- まずはゲーゲンプレスで即時奪回を目指す。ダメなら即時5-4-1守備ラインへ移行。
- 奪い返すことにムキになりCB、CHが上がりっ放しとなり、出来たスペースを利用されカウンターを食らうことも。
<セットプレー>
- ゴールキックはややサイドによったCF目がけて蹴るのが基本。CFが落としたボールをOH、WBが回収していく。若しくはCFが頭でフリックしてOHが裏を狙うパターンもある。
- コーナーキック・フリーキックは白石選手(右足)が最も可能性のあるキッカーだったが、白石選手不在時のキッカーには苦労した。CK時の基本フォメは2-6-2。ショートコーナーも多用。
観客数
- ホーム観客数は2017シーズンを下回り(1試合平均1,216人)、目標だった平均2,000人には遠く及ばず。
- 天候に恵まれないホーム戦もあったが、目標の平均観客数到達を目指した効果的な動員施策を打てたとは言えない。
2018シーズンの個人的総評
結論から言えば、2018シーズンは個人的には非常に満足出来たシーズンでした。
2017シーズンが中村GMをして「何も上積みが無かった」と言わしめたシーズンだったので、余計にそう感じられたのかもしれません。
目標だった勝ち点40は達成したものの、大量失点の敗戦も多く失点数はシーズン過去最多。『そもそも勝ち点40の目標自体、甘すぎるのでは』という意見もあり、2018シーズンのグルージャに対する評価は、人によって様々でしょう。
私は2018シーズンは、『2016シーズンの経営危機からの悪循環を断ち切ったシーズン』とは言えるのではないか、と個人的には考えています。
色々面倒くさい事を書き連ねましたが、昨季最終節、AC長野パルセイロ戦において圧倒的なアウェイ状況の中、グルージャの戦いを貫き勝利を掴んだ選手たちを見て感じた多幸感は、目標達成などどうでも良くなるほど忘れがたく価値のあるものでした。
あのときの感覚をもっと味わいたいですし、もっと多くの人たちにあの感覚を味わって欲しいと思っています。
失点数やら、怪我の多発・コンディション不良やら、観客動員やら、スタジアムやら、上手くいかないことも多く足りないものだらけのグルージャではありますが、2018シーズンは限られたリソースの中、選手、監督・コーチ、フロントスタッフには本当によくやって頂きました。改めて感謝を申し上げます。
2019シーズン展望に続く。