マッチレビュー J3リーグ第24節 グルージャ盛岡 vs アスルクラロ沼津
今季ここまでのグルージャにおいて、ベストバウトと言える内容の濃い素晴らしい試合でした。
私個人的には、現地観戦でなくDAZN視聴だったことが悔やまれます。
24日、グルージャはホームいわスタで行われたJ3第24節で、リーグ暫定2位のアスルクラロ沼津にスコア2-1で勝利し、今季初の2連勝を遂げました。
公式結果
フォーメーション
グルージャは累積警告で出場停止の垣根選手に代わって林選手が先発。4-4-2のCHとして林・差波のコンビは今季初。左SHは私が予想した梅内選手ではなく前節と同じく谷村選手。
アスルクラロは前節出場停止だった尾崎選手が右SBの先発で戻ってくるかと思いきや、前節同様に河津選手で、全選手が前節と同じ先発メンバー。
試合内容
試合開始。1分、キックオフと同時に藤原選手が右サイドに大きく蹴りだすと、中村選手のヘディングから、こぼれを薗田選手が拾ってペナ内の角度が無いところからシュート。良いシュートでしたが土井選手がジャンプして触り、ボールはゴール上へ。開始早々、アスルクラロの注文通りの攻撃での大ピンチ。
1分、藤原選手の右サイドのCKはニア狙いでしたが谷村選手がクリア。
8分、右サイドの中村選手から裏に抜けた青木選手にパス。青木選手がクロスを上げますが、中にいた薗田選手、白石選手には合わず。流れたボールに藤原選手がシュートを試みますが当たらず。
13分、左サイドの藤原選手から速いクロス。ペナ内の中村選手がトラップからシュートしますが、ハンドの判定。
16分、自陣でのFKから谷口選手が頭で落とし、岩渕選手が拾ったボールに菅本選手がシュートを試みますが相手の寄せで打てず。こぼれを岩渕選手が差波選手に戻すと差波選手がダイレクトに鋭いシュート。一瞬ゴールに入ったかに見えた素晴らしいミドルでしたが、ゴール右ぎりぎりに外れました。
17分、グルージャ側ペナ内のゴールライン付近で薗田選手と畑本選手が絡み合ってボールの取り合いをしていましたが、笛が鳴って関節FK。この判定はどういう解釈だったのかよく分かりませんでした。ペナ内なので角度が無い位置での関節FKとはいえ非常に危険な場面。白石選手がヒールで流して藤原選手がシュート性の強いボールを蹴り込みましたが土井選手ブロック。
20分、差波選手から岩渕選手に縦パスが入り岩渕選手が切り返してシュートしますが、DFがブロック。
20分、左サイド、白石選手のクロスは鈴木選手が触って土井選手キャッチ。土井選手のキックを谷口選手が収めて谷村選手へパス。谷村選手はドリブルからミドルシュートを打ちますが徳武選手の足に当たって弱いボールになり、岩渕選手も詰めていましたが間に合わず大西選手がキャッチ。
22分、薗田選手が右サイドからミドルシュートを打ちますが、土井選手が正面でキャッチ。
25分、左サイドに回った中村選手から鋭いクロスが入り、薗田選手がゴール前に飛び込みますが、ぎりぎり合わず、ボールは右に流れました。
26分、中盤でのボールの奪い合いから谷村選手が右サイドに開いた谷口選手にふわりとしたミドルパスを出すと谷口選手はワンバウンドさせてペナ内でボレーシュート。ボールは惜しくもゴール脇左を通過。
27分、右サイドから中村選手が鋭いクロスを入れますが、ペナ内の薗田選手、白石選手には合わず。
33分、中村選手のクロスは土井選手がキャッチ。
35分、岩渕選手から左サイドの谷村選手へパス。谷村選手はドリブルしてから、ペナ内中央に入った岩渕選手に返しますが、沓掛選手がクリアし岩渕選手はシュートを打てず。
36分、待ちに待った先制点がグルージャに入りました。差波選手の左サイドCKをニアの畑本選手がドンピシャのヘディングシュートで枠内右にゴール。前節に続き見事なCKからのゴール。グルージャ先制で1-0。
39分、CKのクリアの流れから右サイドの白石選手がクロス。ニアの青木選手が頭で擦らせてファーに流すと、徳武選手が飛び込んでヘディングシュート。しかし惜しくもボールは枠外右へ。
41分、河津選手からロングボールが左サイドの中村選手に入ると、中村選手が頭で触ったボールを薗田選手が収めて中村選手へパス。中村選手が左足でシュートしますが、ボールはゴール左へ逸れました。
45+1分、左サイド藤原選手のクロスは土井選手キャッチ。
前半を1-0で終了。シュートはアスルクラロの方がやや多いですが、グルージャも流れからのチャンスを作れていますし、何といっても差波選手のCKと畑本選手のヘディングシュートは素晴らしいものでした。
後半開始。56分、ゴール右の絶好の位置でFKを得たアスルクラロ。白石選手のキックは左に流れますが、拾った藤原選手からパスを受けた中村選手がクロス。薗田選手が林選手のマークを問題にせず、きれいに頭を合わせましたがボールはゴール左に逸れました。
57分、右サイドの河津選手から菅井選手へパス。菅井選手がドリブルで差波選手と久保選手をかわし、ペナ内でシュート性のクロスを蹴ると薗田選手が滑り込んでそのボールを足でタッチ。ボールは土井選手の上を超えてゴール枠内左に入りました。この場面、グルージャ左サイドの守備の人数は足りていたのですが、マークが後手に廻り差波選手の後ろのスペースを空けてしまったことが悔やまれます。アスルクラロ追いついて1-1。
61分、谷村選手が左サイドの長い距離をドリブルで上がりゴールライン間際でクロス。ニアの差波選手のシュートは大西選手がキャッチ。
63分、左サイド白石選手のクロスはファーで鈴木選手がクリア。
66分、右サイドに開いた差波選手からクロス。ファーの福田選手がヘディングで狙いますが当たらず。
67分、白石選手の右サイドCKはこぼれて左に流れたところを藤原選手がシュートするも梅内選手がブロック。
68分、梅内選手がドリブルからミドルシュートするもゴール上枠外。
74分、藤原選手からペナ内にふわりとしたボールを入れると、青木選手が頭で落とし右サイドから菅井選手がシュートしますが、差波選手がブロック。こぼれを中村選手がシュートするも土井選手がブロック。
75分、CKが流れたボールを左サイドの太田選手がドリブルからペナ内でシュート。しかし土井選手がブロック。こぼれを右サイドの中村選手がシュートしますがミートせずグルージャクリア。
75分、菅本選手のクロスのこぼれを差波選手が左サイド谷村選手へパス。ドリブルからペナ内でシュートするも河津選手がブロック。こぼれを差波選手が再び拾って右サイドの菅本選手へパス。菅本選手はボレーでふわりとしたクロスを上げ、そのボールに谷村選手と河津選手が頭で競りましたが、この際、河津選手の右腕にボールが当たりハンドの判定。グルージャPKゲット。谷口選手が落ち着いてGKとは逆の右サイドに蹴り込みゴール。胸を叩くゴリラポーズでゴール裏へ駆け寄る谷口選手。2-1とグルージャ勝ち越し。
78分、中村選手のミドルシュートはゴール左に逸れました。
80分、右サイドの谷口選手にボールがこぼれるとドリブルからクロス。梅内選手がニアに走り込みましたが、沓掛選手がスライディングでクリア。
81分、差波選手の右サイドCKはニアで太田選手がクリア。
83分、左サイド藤原選手のクロスに渡辺選手が頭で狙いますが畑本選手がクリア。
84分、CKがこぼれた流れから左サイドの藤原選手からクロス。河津選手が頭で触り右に流れたボールを薗田選手がボレーシュートするもミートせず。
85分、谷村選手が中央でのドリブルからミドルシュートするも枠を捉えず。
86分、渡辺選手のミドルシュートは畑本選手がブロック。
87分、尾崎選手の右サイドCKはニアで渡辺選手が合わせますが、ボールはゴール右に逸れました。
90+1分、菅井選手からペナ内にふわりとしたボールが入ると、渡辺選手が頭で落としますが、アスルクラロの選手に合わず土井選手がキャッチ。
90+2分、相手パスをカットした差波選手から谷口選手、林選手と繋ぎ、谷村選手がミドルシュート。しかしDFに当たり大西選手がキャッチ。
試合終了。2-1でグルージャがまさかの勝利。
選手の評価
MOMは先制点となったゴールを決め、アスルクラロの攻撃を跳ね返し続けた畑本選手。畑本選手だけでなく最終ラインのDF4名は、アスルクラロ攻撃陣の圧力に屈せず粘り強く守ってくれました。
尚、畑本選手のゴールはDAZN週間ベストプレーに取り上げられております。
明治安田 #J3 第24節 #DAZN週間ベストプレー👏🏻
— DAZN ダ・ゾーン (@DAZN_JPN) 2017年9月25日
首位相手に勝利の盛岡、前半戦大敗の借りを返した琉球、後半3ゴールで快勝の栃木、相模原との"神奈川ダービー"を制し3連勝と勢いに乗るYS横浜など!今節のベストシーンをお届け!#DAZN をテレビで観よう📺 pic.twitter.com/RVLcUxj5s1
差波選手は前節に続きCKで畑本選手の先制ゴールをアシスト。もうグルージャにおけるプレースキック職人と言って差し支えないでしょう。2点目のPKを呼び込んだ波状攻撃も、差波選手のパスが起点となっており、この試合のもう一人のMOMとも言えます。こんな素晴らしい選手を貸してくれたベガルタ仙台さんには、足を向けて寝られません。ベガルタ仙台さん、ありがとう。そして来季もよろしく…。
土井選手はこの日も安定したプレーで、グルージャのピンチを救いました。前節に続いてDAZN週間ベスト5セーブに、土井選手の2つのプレーが選ばれております。
明治安田 #J3 第24節#DAZN週間ベスト5セーブ!
— DAZN ダ・ゾーン (@DAZN_JPN) 2017年9月26日
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プレー以外の部分で触れておきたいことが一つ。2点目となったPKを谷口選手が決めた瞬間、まだこの試合で勝てる確証は無かったものの、「よくぞ3週間前のどん底状態からここまで持ち直したな…」と『最強』アスルクラロ沼津相手に互角以上のプレーを見せているグルージャの選手たちに対しての感動で胸が一杯になっていたのですが、試合後には「全く別の意味で」このシーンに泣かされました。
【イベント】青松支援学校 岩手医科大学附属病院内の学習室を訪問しましたhttps://t.co/DV3lujEmpz #グルージャ盛岡 pic.twitter.com/XbTyxoLD9n
— グルージャ盛岡【公式】 (@grulla_staff) 2017年9月27日
あのゴール後の谷口選手のゴリラポーズにそんな意味があったとは…マンガの主人公かよ(泣)…。谷口選手、ありがとう。
また後半アディショナルタイムでの2分足らずの出場時間でしたが、この試合で田中憧選手がJリーグデビューを飾りました。プロ1年目の田中選手はリーグ開幕直後の大怪我により大幅に出遅れましたが、今後はスタメン争いに加わってくることでしょう。田中選手、おめでとうございます。今後に期待しています。
アスルクラロの選手の中では、この試合での得点で得点王トップタイとなった薗田選手が素晴らしかったと思います。得点の匂いがする場所には常に顔を出し、最後までグルージャの脅威となっていました。
総評
試合開始直後の大ピンチの時は悲惨な試合結果も覚悟しましたが、強者であるアスルクラロ沼津から見事な勝利を奪うことが出来ました。
戦術的には、アスルクラロの強烈なプレスを押し返すための相手DF裏へのロングボールが非常に「効いた」試合でした。
今季初の連勝で多少気分も楽になったのか、普段は口数の少ない菊池監督から興味深い試合後のコメントが出てきました。
連敗から、前節、今節にかけてプレースタイルがショートパス主体からロングボール主体に転換されたように見えるが、今後はどういった方向になるのか?
(菊池監督):個人的にですが、ショートパスもロングボールも同じだと思っています。どちらも相手の背後を取るための過程のひとつでしかないので、状況に応じて効果的なものを選択することが大事だと思います。より相手の裏への意識というのがゲームに出ているなとは思います。”パス”というのは”通す”という意味なので、そこには長短の差しかないと思っています。狙われているところに出すのではなく、狙われていないところに通す、且つそこに人が動いて入っていくことを目指しています。ただ闇雲にボールを前に前に蹴っているだけではないので、そこは技術的なところでずれたり、合わなかったりはありますが、遠くを見つつも近くも見ているか?という選手たちの判断も大事になってきます。裏を狙うばかりでは怖くないですし、つなぐだけでも怖くはないので、そのあたりの状況に応じた判断力というのも選手たちに求めていきたいと思います。スタイルの転換ではなく、上積みとしての選択肢のひとつという認識です。
試合の終盤に相手の運動量が少し落ちたところでもロングボールを多用していたように見えた。セーフティなプレーという指示だったのか?
(菊池監督):私も「フリー」だと声がけしましたが、そこは状況が見えているかいないかというのはその選手自身の課題です。サッカーは状況が見えていれば、まず止めるというのが大前提だと思うので、そこについては全員で共有していきたいと思います。後半始まって20分くらいは押し込まれる展開が続いていたので、そういう場面でこそFWの選手がスペースに走ってボールを受けるといった動きが必要だと思うので、試合の流れを掴むという意味で、状況判断というのは今後も高めていきたいと思います。
確かにこれまでがショートパスにこだわり過ぎ、ゴールに向かう姿勢や1対1での闘争といったサッカーの本質的な部分が疎かになっていたのかもしれません。この辺り、プレーのレベルに天と地の差はありますが、ブラジルWC以降の日本代表とも重なるテーマのように感じました。
この日の試合は今季のグルージャにおいて最もパス数が少ない(257本)試合となりましたが、アスルクラロの圧力に押されながらもゴールを目指す姿勢はこれまで以上に見られましたし、ロングの裏狙いだけでなくショートで繋ぎ相手ゴールに迫る場面も見せてくれました。 また出場した全選手がよく走り、フィジカルで勝る相手に対し球際で食らいついていました。2点目となったPKを獲得出来たことはラッキーでしたが、グルージャの選手たちが対価を払って得たものと感じられました。
今季残りのリーグ戦では、「ボールを蹴る、止めることに拘りながらも、状況に応じてロングボールも使いゴールに向かっていく」現在のグルージャのスタイルを、更に進化させて欲しいと思います。
この試合、残念だったのはこれだけの素晴らしい試合に、1,000人程度の観客しか集められなかったこと。地上波テレビでこの試合を観戦された方の内の何%かは「グルージャも結構やるじゃない、次はいわスタに応援に行ってみるか。」などと考えてくれたであろうことを祈ります。
昨季のグルージャにおける最大のハイライトは天皇杯のベガルタ仙台戦でしたが、今季はこのアスルクラロ沼津戦がハイライトだったのかも…なんて総括するには早いですね。まだ9試合(うちホーム3試合)も残っていますから…。グルージャはまだまだ高く翔べる!
「翔ぶ」と言えば(強引)、次回のホーム戦である第27節FC琉球戦(10月15日)で遂に我らのマスコット、『キヅール』が誕生しますね。FC琉球戦では多くのお客さんの前でグルージャが勝利を収め、キヅール生誕を盛大に祝いたいものです。
その前に、次節のアウェイ、FC東京U-23戦もこの調子で勝利を掴み取りましょう。